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セミナーレポート|「採用と定着のこれからを考える」①

令和6年11月29日(金)、企業向けセミナー「採用と定着のこれからを考える」が開催されました!

https://fukui-asuhenotayori.mhlw.go.jp/n/ncd026ec4ff3e

今回は、企業のみなさんを主な対象としたセミナー。
全体進行は前回講師できていただいた株式会社akeruの大連さんです。

今回のセミナーテーマは「採用と定着のこれからを考える」。

新しい人材確保の手法や、採用した人材の育成、組織としての醸成など、多くの企業が悩みを抱える人材に関するあれこれを、ゲスト講師の実践からともに考えていきます。

全4講座のうち、今回は第2講座までが実施されました。

第1部|スポットワーカーの活用方法を知る

一人目のゲストは、福井ショッピングモール専務理事の佐々木国雄さん。

普段は福井市民なら誰もが一度は足を運んだことのある「ラブリーパートナーエルパ」。

その運営事務局として、オープンから20年以上、館内イベントの企画と運営を一貫して担当されてきました。 

佐々木さんからお話しいただいたのは、前回のセミナーでも話題にあがった、スキマバイトサービスの活用について。

エルパの運営にあたり、実際にサービスを活用されているという佐々木さん。活用者の目線から、サービスを使うメリットについてお話いただきました。

人手不足が大幅に改善!

佐々木さんによれば、まず大きな前提として、小売業界はどの店舗も人手が足りていないといいます。

どれほど足りないかといえば、シフト組みに苦労するというレベルではなく、もはやお店を開けることができないほど。

人手不足対応のためにこれまでは派遣会社を頼っていましたが、多額の費用がかかってしまうということもあり、何かいい策がないかと悩んでいたと言います。

そんな中で始めたスキマバイトサービスの活用は、大幅な状況改善につながりました。

「信じられないかもしれないですが、募集開始から数時間で助っ人のアルバイトスタッフ募集が埋まるんです」

なんと、これまで多くの時間とお金をかけて集めてきたアルバイトスタッフが、サービスに掲載するだけであっという間に集まるようになったそう。

また、これまでは派遣会社から提示されていた額に合わせていた時給も、サービス上では自分たちで設定することが可能に。

サービスの手数料はかかるものの、それでもこれまでかけていた額より低い金額で人材不足を補えるようになったといいます。

よい人材を確保する

スキマバイトサービスを使った人材確保の利点として、優秀な人材への優先的な声がけというものがあります。

例えば、エルパから臨時アルバイトの募集を掲載する際、以前にアルバイトにきてくれた中で「またきてほしい」と思うスタッフには、一般への公開より先に募集情報を送ることができるそう。

すると、以前にきてくれた優秀なスタッフから先に募集を見てマッチングが埋まっていくので、結果的によい人材を多く集めることができます。

また、今回紹介していただいたサービスでは、そのまま人材の引き抜きもOKとされています。

お店で働いてもらう中で正式なスタッフとして雇用したい場合には直接お店側が引き抜き可能、かつそこに仲介料は一切発生しないという点も、雇用側としては大変ありがたいそう。

面倒な総務系業務もサービスが肩代わり

もうひとつ、サービスを活用してきた中で大きなメリットだと佐々木さんが感じているのは、手続きの簡易さ。

「雇用」という行為には多くの手続きが発生する場合もありますが、スキマバイトサービスを活用する場合にはそのような面倒な業務はすべてサービス上で完結します。

これまでは自分たちでしなければいけなかった総務系業務を全てサービスが肩代わりしてくれるため、雇用に伴う業務への対応時間が大幅に削減されたといいます。

社員や各店舗からも感謝の声多数

半信半疑で使い始めたスキマバイトサービスを使った人材確保の取り組みも、どの店舗の募集にもちゃんと人が集まり、エルパのイベントや企画に必要な人でもちゃんと揃うということから、エルパで働く社員や各店舗の方々からもとても好評を得ているそう。

第2部|社内の取り組みで離職防止につなげる

二人目のゲストとしてお話をしてくれたのは、株式会社 ALL CONNECT の人事部長を務める小林美奈子さん。

部下20人を抱える管理職として働きながら、二児の母として子育ても両立されています。

小林さんが所属する株式会社ALL CONNECTは、創業20年、社員数550名、売上規模500億円という、通信事業のリーディングカンパニーとして成長を続けてきた企業です。

社員の平均年齢が30歳という若い人材が多い会社として人材育成の方針として大切にしているのは、「どこにでも通用する人材」を育てるということ。

「働いてもらう以上は、従業員をただの労働力として消費するんじゃなくて、ちゃんとどこでもやっていける強い人材として育成し続けるという責任が会社にもあります。従業員も、会社に対してただ安定を求めるのではなくて、稼ぐことのできる人材として自分自身が成長し続ける必要がある。そういう思いを『どこにでも通用する人材を育てる』という言葉に表わしています」

結果を評価する

次に小林さんが示してくれたのは、会社の醸成を象徴するいくつかの数字。

若い社員が多く、会社の男女比は1:1。女性管理職の比率も37.7%と全国平均の3倍近い高比率で、年齢や性別に関係なく活躍できる会社だということがわかります。

また、残業時間も月平均8.6時間と少ないなかで、会社としては500億円という売上を出しています。

小林さんいわく、このような数字を目指して設計した具体的な取り組みがあったわけではなく、会社と従業員の成長を両立する評価と報酬の制度設計を行ってきた結果、自然と辿り着いた数字なのだそう。

評価の制度設計において重要な点は、「規律」と「姿勢」という軸に加えて、「実績」を評価すること。

報酬においては、シンプルに「実績」が反映されます。

例えば500万円の利益を出すという目標設定に対する評価を行うとき、目標達成のために従業員がかけた時間や営業の件数は一切評価には加味されず、とにかく成果としての数字が評価の対象となります。

評価については、期限と状態の目標を明確に数値化すること、主観的な感情での評価、特に過程についての評価を一切しないことがポイント。

結果として、勤続年数や年齢は関係なく、成果を出せば出すだけ報酬に反映されていくこととなります。

目標に対しての過不足が数値として明確になることで目標に近づくための行動量やトライの回数が増え、成功率は上がっていきます。

いい結果を出すことで高い報酬を得られるという体験によって、プロセスでなく結果に意識が向き、「もっと結果をだしたい」という成長意欲の向上につながっていきます。

それらの組み合わせにより、会社自体も成長し、意欲的に働ける環境の醸成が進んでいきます。

また、社員と直上司の1on1面談は週1回というペースで行っており、その中で、目標設定に対する現時点での報告や過不足、次のアクションなどを確認することで目標達成を促し、評価が確定したあとはフィードバック面談の場を設けて今後の方針について話す機会を設けるなど、制度を運用していくために必要な社員とのコミュニケーションは大事にしていることにひとつだそう。

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「年間休日選択制」の導入

もうひとつ、社員のワークライフバランスの実現と生産性の向上を目指して行っている取り組みが、「年間休日選択制」。

こちらの制度は、社員が年間107日〜150日の間で年間休日の数を自由に選択できるという制度です。

制度開始前は年間休日が107日しかなかったというALL CONNECT。

周囲の会社は120日や130日というのが定着してきた中で、107日という日数が求職者からみるとネガティブに働き、採用にも苦労していたと言います。

状況改善のために年間休日を増やすことを検討したものの、ネックはコスト上昇と生産性の低下でした。

また、社員の満足度向上には即効性があるものの、会社の経営にも大きなインパクトがあるため、持続可能性を考えたときに困難さがありました。

そこで元々の評価方針であった結果を評価するというところに立ち返って、年間の休日も個人のライフステージに合わせて選べる形にしたのだといいます。

選択した休日数に合わせて目標を設定し、勤務時間の中でちゃんと成果を出す。

基本給は選択した休日数に合わせて設定しますが、賞与や昇給は出した結果が一緒であれば同じだけ配慮されます。

この制度では年一回年間休日選択のタイミングがあり、そこで自分の希望する年間休日の日数を選びます。

例えば、一年間がっつりと働いて稼ぎたいとう人は、これまで120日だった年間休日を107日に減らしたり、逆に、これまでは仕事一筋でやってきたが、子どもができたので子どもとの時間を優先したいという人は107日だった休日を150日に変更したり。

この仕組みを導入することで、コストは変わらず生産性はむしろあがるようになったといいます。

また、こうやって年間休日を選択できることで、転職しなくても働き方を調整でき、結果的に女性社員が長く会社にいてくれたり、離職率の低下にもつながるなど、会社の強みになっているそう。

シンプルな制度ほど洗練を

このような評価・報酬制度の中で会社と従業員双方の成長を実現してきたALL CONNECTですが、まだまだ試行錯誤の途中だといいます。

「会社と従業員が、お互いプラスの方向に作用するためのキーワードはやっぱり『成長』しかないのかなと当社は考えています。会社は成長の仕組みや機会を用意して、従業員は着実に成長することで会社に利益をもたらす。結果として会社は儲かり、高い報酬として従業員に還元することができるっていう非常にシンプルな流れ。このシンプルな制度ほど、非常に洗練をさせる必要があると感じていまして、シンプルさの中にどうエッセンスを加えるかというところは私達も非常に難しさがあると感じています。まだまだ成長途中ということもありますので、これからもいろいろな試行錯誤を繰り返しながら成長していきたいと思います」。

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第1部、2部ともに、会社や組織を経営する方々、特に人材の確保や定着に課題感のある方々にとっては大変参考になるお話が盛りだくさんの内容でした。

続く第2回でのセミナーではどのようなお話が聞けるでしょうか。

ぜひ楽しみにレポートをお待ちください!