求職活動体験者インタビュー|大河さん(44歳)
「求職活動体験者インタビュー」とは
就職氷河期世代の当事者として実際に求職活動に取り組まれた方のお話をじっくりとお伺いし、その体験談の中から少しでも明日に向きあうヒントを見出していただくための記事です。
大河さんの場合
ー大河さん、今日はよろしくお願いします。さっそくですが、現在の状況を簡単に教えていただけますか。
現在、44歳です。1年ほど前から、乳製品を取り扱う会社で配達の仕事をしています。
ー現在に至るまでの経緯を、可能な範囲で結構ですので教えていただけますか?
早く言えば、中学校くらいのときに引きこもりになりました。そこからずっと家にいて、それが33歳くらいまで続きましたね。
ーひきこもり生活が終わったのには何かきっかけがあったんですか?
自分が28歳くらいのときに母親が亡くなったのが大きなきっかけですね。ずっと支えてくれていた人が亡くなって、もう絶望していて。
もともと父親とは仲がよくなくて、一緒に住んでいるのに顔を合わせない期間が母が亡くなってからも数年続いてました。
そんな生活が続くと自分の気持ちもやっぱり限界にきてしまって。明日死ぬかどうかっていうところまで真剣に考えたりしていましたね。
そういうストレスが溜まっていって、気づくと物にあたってしまっていたりしたんです。
あるときそんな行動が近所にも迷惑をかけてしまうくらいエスカレートしてしまったことがあって、父親と一緒に近所の方に謝りにいきました。
父親と会うのは本当に久しぶりで、今思えばなにかそういう会話のきっかけがほしくてそんな行動をしてしまったのかなとも思います。
結局そのときは何かよくわからない言い訳をして、その流れでなぜか「免許をとりたい」って言ってたんです。
そこから免許をとって、「家を出たい」と言ってすぐに一人暮らしを始めました。お金は父親に出してもらいながらでしたけど。それが33歳くらいのときです。
ーすごい一歩ですね。
そのあとは、仕事しないといけないということで、運送会社の仕分けを深夜にやったりしてましたね。あんまり人とも関わらなくていい仕事だったので。あとは飲食店の皿洗いとか、簡単なことから始めて、社会復帰の一歩を踏み出したって感じです。
ー実際に仕事をしてみて、どうでしたか?
やっぱりずっと社会との接点がなかったのでだいぶ苦労しました。人と会うということが普通の人と比べ何十倍も大変だったと思います。
いまはだいぶ慣れましたけど、当時は人と会うのが恐怖というか。それでも自立のために仕事はしないといけないしっていう感じでしたね。仕事は何回も変わったりして、父親からもサポートは受けてるんですけど、とりあえず一人暮らしは12年くらいになります。また家に戻ることになると後退してしまう気がして、ギリギリですけど、なんとかやりきっていきたいです。
ー現在のお仕事はハローワークで見つけたお仕事ですか?
そうですね。とにかく人と密に関わることが不得意でそれを自覚しているので、一人で集中してできるような仕事ということで配達なんかいいんじゃないかと思って、その線で紹介してもらった感じです。
給与はそんなによくはないんですけど、続けられることが一番大事だなと思って。
ハローワークの川端さんにも相談員としてお世話になったことがありますね。いい人そうだし、いまお話したような経歴もお伝えしたうえで自分に向いてる仕事を紹介してもらったりしました。
ー33歳で一人暮らし始められてからいろんなことを経験されたと思うんですけど、これはまだ自分自身の課題だと思うことはあったりしますか?
やっぱり人とのコミュニケーションについてはいまだに慣れないですね。休憩時間が一番怖いかもしれません。フリートークが苦手というか。
だからもうこれは自分の生まれ持ったもんだと思って、自分はこういう生き方しかできないからこれで行こうと決めてます。
配達の仕事は出ればずっと一人だし、もちろん挨拶とか仕事はしっかりしたうえで、あとは割り切ってますね。
ー今の仕事に就かれて一年くらいということですけど、これからの働き方であったり、目標のようなものがあれば教えてください。
正直生活はギリギリなんです。車検もあるし、携帯が壊れたりもするし、税金もあるし。休みの日にバイトでもしないと苦しいような状況。
だから副業っていうんですかね、そういう知識をつけたりして、もう少し収入を増やしていかないといけないなとは思ってますね。余裕がないと選択肢がないので。
前にやってた派遣の仕事は、給料はよかったけど嫌々やっていて。今の仕事はストレスはないけど給料は安いという状態なので、そういう意味でちゃんとバランスとれるようにはなりたいですね。
ー最後に、大河さんと同じような世代で、これから就職や転職、あるいは社会復帰に向かおうとするみなさんにお伝えいただけることがあれば、お願いします。
先ほども言ったんですけど、人に合わせるのはやめて、ある意味自分らしい生き方っていうのを決めていくのはいいんじゃないかなと思いますね。指針を一本を決めることで、逆に迷わないというか。
ぼくもいまは友達もいなくて、人から見れば孤独なんですけど、別に全然苦じゃないし、それでいいかなと。自分はもう、そうなので。
(指針を決めることは)そんなに簡単にはいかないと思いますけど、気持ちのうえでは楽になると思います。
ー大河さん、とても貴重なお話ありがとうございました!
【編集後記】
今回は電話での取材ということで実際にお会いしてお話しすることはできませんでしたが、電話越しにご自身のひきこもりの経験や現在の状況を切実に打ち明けてくださった大河さん。親御さんとの関係性や生活の現状への見解には、いまを生きる大河さんのリアルが詰まっているように感じました。
孤独であっても、自分はそれでいいと思うことができるということ。
それが生きていくうえでの強さなのかどうかはわかりませんが、確かなのは、そう思いながらこのまちに暮らす大河さんがいるということです。
みなさんにとって、自分らしい生き方とは、どんな生き方でしょうか。
そのあり方に明確な答えはないはずですが、もし答えに近づくために誰かの力を借りたいと思うことがあったなら、ぜひ下記の支援機関にも頼ってみてください。
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