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ひきこもり地域支援センター 嶺南サテライト

福井県内の支援機関紹介記事の第4弾。
今回は、以前に取り上げたひきこもり地域支援センター嶺南サテライトについてご紹介します。
 
▼ひきこもり地域支援センターの記事はこちら

 嶺南サテライト

今回の取材で私たちが訪問したのは、小浜市にある「福井県嶺南振興局若狭健康福祉センター」。嶺南サテライトの名を冠した建物があるわけではなく、センター内に常駐するサテライト職員が個人面談や定期的な交流・学習の場づくりを行なっています。

この日はちょうど、月に一度の「親の会」開催日。
「親の会」では、ひきこもりの家族(息子、娘)を持つ親御さんが、ひきこもりからの回復のための接し方や親としての心がけなどを学ばれています。
 
今回も5名ほど参加者が集まられるということで、編集部も見学させていただきました。その様子も踏まえながら、担当者の方にお話を伺いました。

担当者のお話

職員の粟津さん(左)とコーディネーターの田中さん(右)にお話を伺いました。

ー本日は「親の会」を見学させていただいてありがとうございました。前半は自己紹介にたっぷりと時間をとられているなと感じました。
 
自己紹介と近況報告を合わせて話をしてもらうようにしています。
 
今回参加されたみなさん同士が会うのは初めてではないですが、基本的には1ヶ月に1回しか会は開催されないので、互いのお名前でしたり、お子さんの年齢であったりを改めて確認する意味合いもあります。
 
お子さんの年齢などがわかったうえで話を聞くことで、他の親御さんもイメージがつきやすいので、できればお話してくださいとお伝えしています。もちろん、どうしても言いたくないという場合にはパスしていただいても全く問題はありません。
 
あとはそれぞれの近況や嬉しかったこと楽しかったことをお話ししてもらっています。「あまり変化はありません」と話される方も多いんですが、親御さんがお子さんの小さな変化を感じられるようになってくるといろんなことを話してくださるようになります。
 
プライベートで嬉しかったことや楽しかったことを話してもらうのは、日常生活の中でつらいことも多いかもしれないけど、ちょっと振り返ってみると楽しいこともないわけじゃないということを意識してもらう時間になればと。
 
そんな時間の副産物として、普段育てている野菜のことですとか、(ひきこもりに関すること以外の)話のネタが生まれたりしています。

参加されている親御さんが自宅菜園でつくった野菜のおすそ分け。

ーコーディネーターのお二人がフランクに参加者のみなさんとお話しされていたのが印象的でした。
 
会が始まる前から、参加者のみなさんにはできるだけ声をかけるようにしていますし、できるだけ(雰囲気が)固くならないように心がけています。今日参加されていたみなさんは何度も会に来られている方々で、ずっと関わらせてもらっていることもありますので、安心してくだらないことも言えたりします。ちょっとフランクになりすぎているところもあるかもしれないですね(笑)。
 
楽しい雰囲気で、できるだけ暗くならないようにしようっていうのはこの会を開くうえで心がけていることです。
 
どうしても話の流れで重ための話題になっていくこともあるのですが、悲観的な話題に集中してしまって参加者のみなさんにとってもいい状況じゃないなというときは、コーディネーター側で「こんな考え方もあるかもしれませんね」と違う視点で物事を見てもらい、みなさんと一緒に意見交換を進めていくこともあります。
 
1週間に1回、嶺北のコーディネーターも含めてミーティングをして、それぞれの進行を振り返りながら意見交換を行なっています。こちら側も試行錯誤ですね。

ー参加されているみなさんが手元に本を置いていらっしゃったと思うのですが、課題図書のようなものでしょうか?
 
昨年「明日へのたより」にも掲載していただいた学習会で講師に来ていただいた方の本なんですが、専門書がいろいろある中でこれが一番シンプルでわかりやすく書いてあるので、会での勉強用の資料として使わせてもらっています。
 
「我が家はこの段階ではないけど、ゆくゆくはこうなっていくんだな」ということがなんとなくわかるようになるので、手探りでどうしたらいいのかわからない状況から、ちょっとだけ道筋が見えるようになる。そうすると自分自身も楽になって安心できるようで、参加しているみなさん、熱心に読んでくださっています。

ー「親の会」に参加されているみなさんや、個別面談に来られている親御さんからはどんな反応がありますか?
 
普段、この場所以外で我が子のことを喋る場がほとんどないという方は多いです。なんなら他人には隠していたりする方もいるので、「思う存分に我が子のことを喋れる場所があるなんてこんなにありがたいことはない」と言われたことがあります。月に一回来てもらって、思う存分話してもらって、それだけでちょっとはスッキリしてもらえているのかなと思います。本当はスタッフはなるべく喋らず親御さんに話してもらおうと思ってるのに、ついつい話しすぎちゃうんですけど(笑)。
 
「悩んでるのが自分だけじゃないって知れてよかったです」っていう親御さんもいらっしゃいます。「親の会」の近況報告で「我が家にはあまり変化がない」と話していた方も、他の方の近況がよくなっていると、自分のことのように喜んでくれたりするときもあります。

「よかったね」と言い合えるくらい、会を通した関係性の深まりもみられますね。

ー変化を捉える目線も親御さんによって違いますよね。それぞれ境遇が違ったりする中で、いろんな目線を交換できる場があるっていうのが貴重だなと感じました。
 
個別相談のときはじっくりマンツーマンで深いところまで話を聴けるという良さがありますが、「親の会」では親御さんにとっての「仲間」もできたりして、また違う良さがあります。得られるものがそれぞれ違うので、両輪なのかなと思いますね。
 
親の会のイメージ的に「ベテランのお母さんからなんて言われるんだろう」とか「自分の子育てが間違っていたと言われるんじゃないか」っていうハードルをつくられたりすることもあるんですが、実際に参加してみていただいた方は「来て良かった」「気持ちが軽くなった」と言って下さる人がほとんどです。
 
ーこういった、ひきこもりについて話をしたりできる場所というのは他にもあるんでしょうか?
 
県内の各地にもあるにはあります。ただ、会によって内容や得られる情報の性質が違いますし、嶺南にはまだまだ少ないかもしれません。
 
参加者同士の意見交換がメインのところもあれば、ある程度の専門性をもった支援者からお話を聴きながら勉強するような会もあります。
 
お子さんの状況やご自身の興味関心によって参加する会を使い分けてらっしゃる方もいます。

ーひきこもり地域支援センター嶺南サテライトに問い合わせをしたい際は、どこに連絡をすればいいでしょうか?
 
まずは福井市光陽の県総合福祉相談所のホッとサポートふくい へ連絡をお願いします。
 
嶺南サテライト担当者も週5日ここにいるわけではなくて、固定電話もありませんので、ホッとサポートふくいの電話窓口で「嶺南です」とお伝えいただければ、担当者から折り返し連絡する形になります。
 
ご家族がひきこもりについて正しく理解して適切に接することは、とても大切です。親の会はハードルが高いと思われるかもしれませんが、見学からのスタートでも大丈夫です。

参考になる話が聞けたり、気持ちが少し軽くなることもあると思いますので、まずはご家族だけで抱え込まず、お気軽にご相談いただければと思います。

ーお話を聞かせていただいた田中さん、粟津さん、ありがとうございました!


 

 

ひきこもり地域支援センター 嶺南サテライトでは、ひきこもりのお子さんをもつ親御さんとの個別面談や、週に一度の交流会「フリースペース」、月に一度の保護者学習会「親の会」などのサポートを実施しています。

今回初めて「親の会」の様子も見学させていただいたことで、ひきこもりの家族という当事者であるみなさんの苦悩や葛藤を知ることができました。一方で、同じ悩みを持つ仲間と言葉を交わすことで思わず頬を緩めて笑顔を見せる参加者のみなさんの姿も拝見し、「親の会」という場所が少なからず参加者にとって一時の心の安らぎにつながっていることも実感することができました。
 
もしこの記事を読んでいただいた方の中にひきこもりのご家族について悩まれている方がいれば、ぜひ身近な支援機関へ連絡することで、今を変える小さな一歩を踏み出してみませんか。

【支援機関情報】

WEBサイト福井県ひきこもり地域支援センター(ホッとサポートふくい)嶺南サテライト
所在地|〒917-0073 小浜市四谷町3-10 若狭健康福祉センター内
TEL|0776-26-4400