【企業向け】セミナーレポート|採用と哲学
令和5年12月16日(土)、就職氷河期世代支援セミナー「採用と哲学〜『はたらく』の本質を求め合う時代が来た(かも)。〜」が開催されました!
今回のセミナーは、求職者を採用する立場である「企業」向けの講座。採用活動や、人材との出会いをより有意義なものにするために必要な対話のあり方について、「哲学」という観点を用いながら講師の若新雄純さんよりお話をいただきました。
コミュニケーションの本質
冒頭、俳優の演技や映画の撮影などを引き合いに出しながら紹介されたのは、人とのコミュニケーションにおいて、用意した言葉や資料を正確に伝えること以上に、自分の気持ちや感情が伝わることが大切だということ。
どんなに用意したものを間違えずに伝えられたとしても、なぜか伝わりきらない、相手の心に刺さらないことってありますよね。
逆に、言葉の組み立てや話し方がうまくない人でも、自分の気持ちや感情的な部分を伝えることがうまくできる人、あるいは相手を聞く気持ちにさせる人というのはなぜか人に気に入られたり、人に感動を与えたりすることができたりする。
コミュニケーションというのは基本的にその場限りのもので、同じことの繰り返しはありえません。
だからこそ、その場の中で(事前に用意されたものではない)生き生きとした何かを伝え合えるかどうかがお互いの本質を理解する上でもとても大切なことなのだといいます。
採用活動における「本質」への近づき方
採用活動においても、表面的な条件だけでなく「働くこと」に関するお互いの思いを共有することで、より本質的な選択に辿り着くことができるといいます。
その際に有効なのが、哲学的な視点で言葉を交わしてみること。
例えば、「信頼関係とは何か」「仲間とは何か」「絆とは何か」。
組織に関わる重要で抽象的なテーマについて時間をかけて企業と求職者が言葉を交わしていくことで、お互いが「働くこと」についてどのような部分を大切にしているのか、その本質を見出すことができるようになるといいます。
「正解」ではなく「納得」を探していく
対話の場を設ける際に意識したほうがよいのは、対話を通じて「正解」を求めるのではなく、お互いに「納得」できるものを見出していくということ。
「正解」というのは、誰にとっても正しい解があるということで、主に学校教育を通してずっと「正解」を見つけるトレーニングをしてきた私たちは、就職先を探す際にも、あるいは採用する立場になったとしても、それぞれの立場からの「正解」を探してしまいがちです。
しかし、学校という場を離れて社会に出てみれば(道徳や規範を抜きにすると)「これが誰しもにとって絶対に正しい」というものはほとんど存在せず、求職者と企業の担当者が互いにとっての「正解」を重ね合わせることは、実はとても難易度の高いことなのです。
そのような状況に対して今回のテーマである「哲学」が寄与できることは、本人たちの「納得」を引き出せる可能性があるということ。
絶対の正解はないんだけれど、その2人、あるいはその集団においては、「これは私たちにとってすごく大事だし、そう言えそう」というものを見出すことができる。
このように、対話を通してお互いに納得できるものを見出していくことは哲学の世界で「本質観取(ほんしつかんしゅ)」と呼ばれていて、「本質観取」を目指す対話を行ううえでは、自分のなかにある「正解」を手放すということが大切だとされています。
自分の中に用意されている答えを押し付けると、そもそも対話が成立しません。
「正解」ではないけれども「納得」できるものを探していくこと。それを対話の目的としながら、哲学を通して互いの本質に触れていく。
そんな対話のあり方を目指していくことで、長く一緒に働ける仲間や会社との出会いが生まれていくのかもしれません。
■Youtube配信動画
当日の様子は以下のリンクよりYouTubeでご覧いただくことができます。