見出し画像

求職活動体験者インタビュー|稲本さん(34歳)

「求職活動体験者インタビュー」とは

就職氷河期世代の当事者として実際に求職活動に取り組まれた方のお話をじっくりとお伺いし、その体験談の中から少しでも明日に向きあうヒントを見出していただくための記事です。

稲本さんの場合

ー今日はよろしくお願いします。さっそくですが、現在の状況を簡単に教えていただけますか

いまは34歳です。就職活動を終えて、7月から新しい職場で働く予定です。

ー現在に至るまでの来歴を、可能な範囲で結構ですので教えてください。
 
元々は看護師として数年間働いていました。そのあとは生命保険の営業をやって、そのあとは繊維関係の会社を2社ほど経験しました。

最後に勤めていた繊維関係の会社は妊娠を機に退職して、出産をして、育児期間が2年ほどありました。この春に子どもを保育園に入れられたこともあって、就職活動を始めて、7月からの就職が決まったという感じです。

ー育児中から、「働きたい」という思いはあったんでしょうか?

正直に言うと、働くことに対してはそこまで強い思いがあったわけじゃないです。これまでの経験上、(働くということに対して)あんまりいいイメージがなかったので。

働きたいっていう前向きな気持ちがあったわけではなかったんですけど、育児のほうもやっぱりそれはそれで大変で。ちょっと子どもと離れる時間がもう少しとれたら、少し心の余裕が生まれるかなと思って、就職活動をしてみました。

ーありがとうございます。就職活動を始めてみようとなって、地域若者サポートステーション(以下、サポステ)に行き着いたのにはどんな経緯があったんでしょうか?

 これまで転職が多かったのも、それぞれの職場に馴染むのが下手だったというか…。

仕事も遅いし、すぐに緊張しちゃうし、コミュニケーションも上手じゃないし。それで居づらくなって転職するっていう感じだったので、(いざ就職活動をしようと思ったときには)子育てをしてた2年間というブランクもあってすごく不安で。

はじめはハローワークのほうで仕事を探し始めたんですけど、いま不安に思っていることについても相談してみたら、「サポステに行ってみたらどうかな」と紹介してもらいました。

ー最初にサポステに来られた時期はいつ頃ですか?

今年(2022年)の3月ですかね。子どもを保育園に入れながら求職活動ができるのは3ヶ月だけなので、紹介してもらってすぐにきました。

最初はサポステのプログラムにも参加してみようかと思ったんですが、コロナのこともあったので一旦面談だけで進めることにしました。

 ー面談のなかで話したことで印象的だったことは何かありますか?

ほんの些細なことなんですけど、自分がコミュニケーションがすごく苦手で、周りの大人みたいにハキハキ喋れなくて、前の職場の人からちょっと嫌なことを言われたりすることがあった話をしたときに、全然否定せずに全部受け止めて聞いてくれたことですかね。

安心感はすごくありました。肯定もしないけど否定もしないというか(笑)。

なんていうか、すごく柔らかく聞いてくれて、気楽に話せました。

ーなるほど。ハローワークやサポステを利用しながら就職につながるまでのことをもう少し具体的に聞いてもいいですか。

(サポステに通いながら)ハローワークの担当の方にもいろいろと相談して、「こんな会社があるよ」とか「稲本さんにはこんな仕事が向いてるんじゃないかな」っていう風に情報や意見をいただいて、候補の会社を調べたり見比べたりしていました。

何社か見学に行かせていただいて、これから働く会社に決めました。

ー新しく勤める会社ではどんなお仕事をするんですか?

福祉関係のお仕事で、重度の障害がある方の生活支援をさせてもらいます。
看護の学校に入る前には看護師になるか福祉系の介護士になるか、どっちにしようかなと迷っていた時期もあったので、元々興味はありましたね。ここにきて、そっちに挑戦してみようかなと。

の障害者施設も見て回りましたし、ほかの業態でいうと軽作業の仕事場も見学させてもらったりしました

自分のメンタル的には軽作業の仕事を選んだほうが楽なのかなと思ったりもしたんですけど、子どももできたし、落ち着いて長く働きたいなと思って福祉関係の仕事のほうを選びました。

これまで興味のあった福祉系の仕事にちょっとチャレンジして、自分に自信つけたいなっていうか…。

子どもができたことで変わった部分もあるかもしれません。ちょっとかっこよくなりたいというか。

軽作業のほうを選んでしまっていたらこれまでの自分と変わらないなっていう気もしたので。
 

ー素敵な気持ちの変化ですね。これから働かれる会社に応募を決めた理由はなんだったんですか?

見学に行ったときの、働いてる人たちの雰囲気がすごく良かったです。

施設長もフランクで話しやすくて上下関係とかもあんまりなく、施設長を含めたみんなで協力して支援してるっていう感じが見えました。

(働いているなかで)壁にぶち当たったとしても、ここだったら相談しやすそうだなと思えました。

 ー数日後には働き始めることになると思いますが、今の心境はどうですか。

ちょっと緊張しています(笑)。

でも、働き始めてからもサポステさんで面談はしてもらえるということだったので、そこら辺は安心して、何かあったら相談できるなと。それがあることが支えになってると思います。

一番初めに担当相談員さんに面談してもらったときに、仕事のことだけじゃなくて日常生活のことや子どものことも含めて深く話をさせてもらったりしたので、自分のことを知ってもらえてるという感覚もあるので、安心して頼ろうと思ってます。

ー仕事と子育ての両立というのは稲本さんの人生の中でも初めての経験ですよね。そこに対しての不安はあったりしますか?

仕事なしで子育てをするだけでも大変だったので、仕事を始めて大丈夫かなと不安もあるんですけど、新しい仕事は働く時間を短く調整してもらっているので、なんとかなるんじゃないかなと。

様子を見ながら、長く勤めていきたいなと思っています。パートから正社員にもなれるので、そのあたりも視野に入れながら。

ー稲本さんの中で、今後こんな風になっていきたいなという目標はあったりしますか?

 これまでメンタルが弱くて仕事を続けられなかったということが続いてたので、何かあってもちゃんと自分で気持ちを切り替えられるような、今までよりもちょっとだけ成長した自分になりたいなと思います。

ーこれから稲本さんと同じように就職や転職活動に向かわれるみなさんにお伝えできることがあれば、お願いします。

悩んでるんだったら、ちょっとでも動いてみるのがいいかなと。

初めての場所にいったり初めて会う人と話したりするのは勇気がいることなんですけど、たぶん悩んでるよりも、動き出した方が楽になれると思います。

手を動かしていろいろ調べてみたり、よさそうなところを見つけたら連絡してみたり。

自分のなかでああでもないこうでもないって悩むより、動いてみると全然違うと思います。

ー稲本さん、貴重なお話をありがとうございました!

【取材後記】

インタビューをさせてもらったのが6月の終わり。

その数日後に新しい職場への初出社を控えていたこともあり、インタビューでは「少し緊張しています」というお話もありましたが、言葉の端々から前向きな気持ちが漂っていたように感じられました。

就職から1ヶ月たった時点で行われたサポステ職員さんとの面談では、「体力的にもやっていけている」「担当の利用者を受け持てたことにやりがいを感じている」「相談できる職員がいて安心」など、楽しく仕事と向き合えている様子だったそう。

働く時間を短めにしたことで育児と仕事のバランスもとれており、また「人と関わることが好きだと思えた」と、働く中で改めて自分の気持ちにも気づくことができたということです。

一方では、まだまだご自身の中で課題に感じていることもあるようで、引き続きサポステには通いながら、定期的な面談を継続していかれるとのこと。

不安や課題を自分だけで抱え込むのではなく、支援機関や身近な相談役にうまく頼りながらゆっくりと自分なりに歩みを進めていかれる姿勢が印象的だった稲本さん。

小さな一歩を積み重ねていくことの大切さを教えていただいたような気がします。

【関連記事】

■求職活動体験者インタビュー

 ■サポステふくい

■ハローワーク

■ひきこもり地域支援センター


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!