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求職活動体験者インタビュー|西田さん(37歳)

「求職活動体験者インタビュー」とは

就職氷河期世代の当事者として実際に求職活動に取り組まれた方のお話をじっくりとお伺いし、その体験談の中から少しでも明日に向きあうヒントを見出していただくための記事です。

西田さんの場合

ー今日はよろしくお願いします。さっそくですが、現在の状況を簡単に教えていただけますか。

はい。現在は製造関係の会社に勤めていまして、働き始めて2年半ほど経ちました。年齢は今年で37歳です。

ー現在に至るまでの来歴を、可能な範囲で結構ですので教えてください。

新卒で就職ができなくて、毎日「このままでは駄目だ」と思いながらもどうしたらいいかわからず引きこもりのような状態が長く続いていて、時々、短期のアルバイトをしながら過ごしていました。

あるとき両親から「就労支援の相談に乗ってくれる施設がある」ということを紹介してもらったことをきっかけに、自分も30代になったということもあるし動き出してみようとサポステ福井に通い始めたことで就職につながったのかなと。

それまでは社会とのつながりもほとんど絶っていた状態だったので、そういった情報もあまり自分から取り入れないようにしていたのが実際です。

ー初めてサポステに足を運んだときは勇気が必要だったのではないですか?

そうですね。もともと、人と話すことはそこまで苦手ではなかったんですけど、新卒での就職がうまくいかなかったことで自分の将来像が一気に崩れてしまって、これからの人生どうしようという気持ちや、両親の期待に答えられなくて申し訳ないという思いから自己肯定感がものすごく低くなってしまっていました。

短期で入っていたアルバイトもほとんど人と接点がないようなものだったので、誰かと話をするということはすごく久しぶりでしたし、それに対しては大きな不安もありました

ー実際にサポステに通ってみての印象や、ご自身の変化などはありましたか?

もっと厳しいところかなと思っていたんですけど、本当によくしていただいて。今まで本当に不安で不安でしょうがなかったですし、両親にも申し訳ないという気持ちから家にも居づらくて居場所がどこにもないという感覚もあったんですけど、そういう中で自分みたいなブランクのある人間を受け入れてくれる場所があるということにすごく安心しましたね。

(サポステに通うまでは)生活リズムも崩れていたので、就職に向けてはしっかり朝起きてどこかに通うということも大事だなと思い、意識的にプログラムに参加するようにしていました。


それまで人と接する機会がほとんどなかったので、サポステでは自分と同じような境遇だったり、また違った立場にある方の話を聞くことで自分の中の視野が広まっていった感じはありました。

引きこもっていた時期は「自分は駄目だ」とか「こんなにブランクがあったら就職なんか一生無理だ」という考えがあったのですが、他の方のいろんな話を聞くなかで「まだまだ若いし全然大丈夫だと思うよ」と言ってもらえたりして、サポステを卒業された方や同じように頑張っている方の生の話を聞けたっていうのが自分の中で一番大きかったですね。

卒業してからも、家や職場とも違う自分の居場所として、定期的に卒業生用のプログラムに参加させてもらったりしています。

ーありがとうございます。製造のお仕事をされているということでしたが、仕事はどのような基準で選んでいったのですか?

以前からものづくりに対しては興味があったのと、ハローワークに行ったときに「製造業が向いているんじゃないか」と言われたこともあって、業種としてはそういう仕事が自分に合うのかなと。

当時はコロナ禍でしたし、早めに就職したいという気持ちもあって、ブランクがあっても受け入れてくれる会社があれば入りたいなと思っていました。

ー働き始めてから2年半ほどということですが、実際に働いてみてどうですか?

やっぱり大変ですね。今までとは全く違う環境ですし、製造業ということで納期とか時間に対する意識がシビアです。

スピード感をもってやらないといけないですし、他の方とコミュニケーションもとっていかないといけない。

できるだけ残業もないように効率よく仕事をするという職場の意識は自分には合っているなと思っていますが、2年半が経ったいまも本当に毎日勉強です。

世代としては自分と同じかちょっと上くらいの方が多くて、コミュニケーションについては苦労はしている部分もありますが、業務に対して必要なことなのでしっかりやっていかないとだめだなと。

そうやっていろんな方と関わっていくなかで、実際に製品をつくって感謝されたりするときはものすごく達成感があります。


ー仕事を通してこれから実現していきたいことはありますか?

そうですね。職場で使える機械を増やして自分の仕事のできる幅を広げて、この会社にしっかり貢献していきたいという思いはあります。

これまでは人の意見に流されたり、決断が苦手だったりということもあったんですけど、これからは他人任せでなく、しっかり業務に対する責任感をもっていきたいなと。

あとはやっぱり、ずっと両親にサポートされていたので、逆にこれからは自分がサポートできる立場になっていきたいとも思っています。

ーこれから西田さんと同じように就職や転職活動に向かわれるみなさんにお伝えできることがあれば、お願いします。

就職はゴールではなくて、そこから先も長く働くっていうイメージを持てる、自分に合った会社を選ぶということはものすごく大切なことだと思います。

自分の場合はこんな自分が就職させてもらうなんてという申し訳ないという気持ちもあったんですけれども、自分の経歴を理解してくれるかとか、業務内容に関しても自己分析をしっかりとして、自分に合った会社を焦らず主体性をもって選ぶことがとても大事だと思います。

ー西田さん、貴重なお話をありがとうございました!

【編集後記】

新卒での就職がうまくいかなかったことで、長い間社会に出ることができなかったという西田さん。

サポステとの出会いをきっかけに自身の生活を変え、現在も定期的にサポステのプログラムに参加することで意識的に人と関わる場をつくられています。

 私たちの問いかけにもハキハキと答えてくれる西田さんを見ていると、社会との関わりを絶っていたという十数年の姿が想像し難いほど。

 就職の失敗は西田さんの自己肯定感を大きく低下させ、結果として他人や社会との関わりを避けることになりましたが、これまでの西田さんのストーリーを辿っていくと、自己肯定感とは誰かとの関わりの中でこそ取り戻していけるものなのではないかと考えさせられます。

とはいえ、関わり合うのは誰でもよいかといえばおそらくそうではなく、その人が抱える不安やこれまでの歩みをちゃんと受け止めてくれる誰かが必要なのだろうと。

西田さんの場合はそれがサポステだったわけですが、きっと人それぞれに必要な「誰か」が必ずどこかに存在するはずです。

ほんの些細なきっかけと行動が、あなたやあなたの大切な人にとっての「誰か」と出会わせてくれるかもしれません。

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